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2014年11月23日 降誕前 第6主日 収穫感謝日
「主のご計画」
榎本 栄次 牧師
ルカによる福音書1章5-25節
この世の出来事は全て神のご計画の中にあり、どんな小さなことであっても御心によらないものは一つもありません。すべてのことに言(ロゴス)があり、意味があるのです。
ルカによる福音書によれば、主イエスの誕生物語の前に洗礼者ヨハネの誕生物語がおかれています。キリストの到来の道備えをするものとしてのヨハネです。ヨハネはその生涯を通して、キリストを指し示し、人々がキリストを迎えられるようにと道備えをしました。そして彼は自分をキリストと区別して頑なにその前には出ようとしませんでした。神のご計画に沿って生ききった人です。今日示された聖書は、洗礼者ヨハネの誕生の予告とその両親の信仰です。ここでは神が主役です。そのことに目が開かれるとき、新しい世界に誘われていきます。
時代はヘロデの治世(紀元前37年―4年)。夫の名をザカリア、妻をエリサベトという敬虔な祭司の夫妻がいました。人々から「正しい人」と呼ばれ、非の打ち所のない人物でした。彼らの悩みは、子どものいないことでした。年老いてその望みも絶たれ、静かに暮らしていました。ある日、ザカリアは祭司の努めをしていましたが、くじに当たり、主の聖所に入って香をたくことになりました。ザカリアの努めは香をたき祈りをすることで、彼はひとり自分のことを祈るだけでなく、イスラエルのために祈願を献げる大切な役目でした外では2万人以上の祭司が祈っていました。そこで祈るザカリアの前に天使ガブリエルが現れて神の言葉を告げました。
「恐れることはない。ザカリア、あなたの願いは聞き入れられた。あなたの妻エリサベトは男の子を産む。その子をヨハネと名付けなさい。その子はあなたにとって喜びとなり、楽しみとなる。多くの人もその誕生を喜ぶ。・・・イスラエルの多くの子らをその神である主の元に立ち帰らせる。」(13-16)
「願いが聞き入れられた」とはどういうことでしょうか。ザカリア夫妻にとって「子どもを授けてください」という祈りは終わっていたのです。それは寂しいことで、底なしの空しさを覚えることで、若い頃はいつも祈りの課題だったでしょう。しかし、その祈りはいつからか、自分たちの人生が神に役立ち、後の世に奉仕できるようにと変えられていたことでしょう。個人の祈りからイスラエル全体のために祈りへと変えられていました。そこからまた個人の祈りへとつなげられるのでした。
自分ではどうしようもない悩み、寂しさ、人には言えないけれども、神の前で静かに祈り、聴くときを持つ。その時が神と人との出会い「神のご計画」ミステリーの場となるのです。「あなたの願いが聞き入れられた」のは、その全てを包むものです。聞き入れられるということは、その悲しみを栄光に変えてくださるということです。神のご計画は個人の可能性の延長線上にあるのではないようです。神の側から来るご計画です。
受胎の喜びを神からいただいたのは夫ではなく、妻エリサベトでした。アブラムの妻サライ、サムエルの母ハンナも高齢で出産した人です。神がご計画されるのは、どうして若いときに実現させられなかったのでしょうか。この悲しみ、恥ずかしさが祈りであり、神のご計画になくてならないものだからでしょう。どんな一つをとっても神の計画にないものはありません。
2014/11/23 主のご計画